弘前で考えよう
いくつかの大都市以外で人口減少・コミュニティ縮退が進む現在の日本では、地域の建築・歴史・文化そして自然を大事にしながら、いかにして活き活きとした生活の場を創り守っていくかが私たちに問われています。
今年のJIA全国大会の舞台である弘前は城下町としての豊かな伝統があり、自然と歴史と文化が混然一体となっているまちです。その中に前川國男の設計した建築という、いわばモダニズム建築のレガシーが存在します。それらを大切にし、核としながら大らかに進められているまちづくりは、日本の他の地域にとっても貴重な学びを与えてくれるものと考えられます。
私たち建築家は、経済・社会の大きく速い動きの中で現れるさまざまな変化に対して素早く確実に対応しながらも、文化・歴史・環境を大事にして空間を創造し維持し、人々に貢献するというプロフェッションの価値観の根幹を、繰り返し心に銘記する必要があります。
幸いJIAには、環境・災害対策・保存活用・まちづくりや住宅などの課題に長年取り組み、高い知見と深い洞察をもった建築家が多数います。彼らも全国から集まってきます。
日頃の活動を見直し、互いに考え、共に学び合う豊潤な時間を、秋色輝く東北、青森、弘前の地で一緒につくろうではありませんか。
公益社団法人 日本建築家協会 会長
六鹿正治
東北・弘前からの発信
東北は東日本大震災から8年6か月が過ぎ復興も終盤を迎え、東北全体が落ち着きを取り戻しつつあります。 震災直後から多くの支援を全国の皆様から頂いたことに改めて厚く御礼申し上げます。
日本建築家協会東北支部では「復興からまちづくり」の活動指針のもと、今後どのようなまちづくりに取り組んで行かなければならないかを模索する時期に、10年振りに東北の地で建築家大会を開催することになりました。
私たちは、昨年から2回のプレイベントを開催し、弘前のことを学び、東北支部会員の機運を高め皆様を迎える為に準備を進めて参りました。そして、ここ青森県弘前市において、10月17日、18日、19日の3日間、全国の会員の皆さまと共に開催できることに大変感謝しております。
大会テーマは、「津軽からの再生―生きつづける近代建築とまちづくり―」とし、前川國男が手掛けた8つの建築を大切に保存再生しまちづくりに活用している弘前市、その弘前市民会館を舞台として、震災・復興の話はもちろん、近現代建築の保存・再生の重要性とそれを活用するまちづくりの必要性を議論し、現代社会の課題でもある、既存ストック・歴史的建造物の活用や空き地空き家・人口減少により縮小化し疲弊していく地方都市の再生・リノベーションまちづくりに対してのアイディアや提言をJIAの建築家が東北の地から全国へ、世界へと発信する大会としたいと考えます。
JIA東北支部長 大会委員長
鈴木弘二
前川建築と共に歩む 城下町弘前へようこそ
青森県弘前市は、弘前藩(通称=津軽藩)として栄え、現在では日本一の桜の名所となりました。この地に皆様をお迎えできることを大変嬉しく思います。
弘前市には前川建築が8作品存在し、現役の建築として活躍し続けています。前川の母の先祖が弘前藩の重鎮であったこともあり、弘前市と強い縁で結ばれていました。弘前市民は「ほんものの近代建築」を愛し、今もなお日常生活に溶け込んだ建築として使い続けています。「前川建築ツアー」は大会期間中毎日開催しますので是非参加いただき、城下町ならではの街並み、リズム、津軽の皆さんの暮らしぶり、そのような都会とは一味違った豊かさを感じて頂けたらと思います。
本州最北端の青森県ですが、津軽は肥沃な地です。4月から10月までは爽やかな気候で、夏は気温も高く、リンゴ、お米を中心に沢山の農作物が採れます。冬は寒く降雪量は多いですが、その雪が豊かな水となり恵みをもたらします。大会期間中、リンゴ園でのリンゴ狩り・濁酒のようなシードル・アップルパイ食べ比べなど、美味しいものをたくさん用意してお待ちしております。そうそう「大間のマグロ」勿論こちらも準備しておきます。ご家族もご一緒に、ぜひ津軽の地弘前へ。心よりお待ちしております。
大会実行委員長 青森地域会会長
山本潤児